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恋愛小説 人には言えない! 10

10   おしゃべり男

「お前の気持ちなんかお見通しだって言うの。」
腰を擦ってさも痛そうに同情を引きながら、そいつはマシンガントークを始めた。




「だいたいねぇ、お前が最初瞳ちゃんに惚れたのが間違いだっつーの。歳の差幾つだと思ってんだよ。34 引く 17 イコール、幾つだ?17歳、正解!って。しかも意識し始めたのは、彼女が中学生の頃じゃないかな?こっちはな、まるっとお見通し。あの頃からお前、瞳ちゃんの事語る時はおかしかったし。それに毎年誕生日には俺の名前使って限定もののケーキのオーダー入れてたろ。しかも
『大切な人の誕生日ですので、手を抜かないでください。』
とか俺が言ってるみたいにもっともらしい事言ってプレッシャーかけてさ。平松さんに会うたびにその事からかわれてたんだよ、こっちは。お前、知らなかっただろう。挙げ句にその前後の俺のスケジュールまで調整して早帰りしてる事ぐらい、バレてないと思ってた?しかもなんだ、手帳に写真まで挟んでいるよね。それも寝顔の隠し撮り。この間見ちまったんだよ、悪いねっ。ついでに彼女の携帯にGPSつけさせてるだろう?重役会でも有名なんですけど。定刻になるとお前の携帯が震えてるって。どうせ
『学校を出ました』
とか
『塾を出ました。』
とか通知入れさせてるんだろう?でもさ、犯罪、犯罪、犯罪。それって犯罪!淫行。でもって、ストーカーかい?」
何でそこまでバレているのか。俺は完璧に血の気を失った。
「ついでに言えば、怖くってお前、逃げたんだろうが。」
俺は耳を塞ぎたかった。どうしてこの御曹司が婚外子の割に社内外で幅を利かせているのか。それはいかに有能かって事だって、我が身を持って思い知らされた。
「ずっと童貞よろしく片思いししてさ。今更自分の気持ちを言ってもさ、相手にしてもらえないって思ってて。どうせじじいだもんなぁって。中途半端に格好つけやがって。どっかの歌手みたいに29歳歳の差でも愛してます〜って、開き直れよ、この根性無しが!挙げ句の果てにそれだったらいっその事って、俺の優花騙したんだろ?他人の女、だしに使うんじゃねぇ!」
それから
「結局上手い事言ったんじゃん。」
って、手に持っているブラをくるくる回した。
「瞳ちゃんだって、その気大有りだったろ?こんな勝負下着まで用意して。」
俺は返す言葉が無かった。
「だからさ、優花。こいつに同情しちゃ駄目だよ。こいつはお前の事利用したんだから。隠れみのにしようとしたんだからね。被害者は君と僕なんだ。」
この猫かぶり野郎はあろう事か嘘までつき始めた。
 元はと言えば、てめぇが優花ちゃんに愛想つかされて別れたのが原因だろうが。その上避妊に失敗して、孕ませて。お前の事かばって彼女、妊娠言い出せなかったんだろうが!!それを守ってやろうとしたんだ。騙しただなんて、人聞きの悪い事いうんじゃねぇ!
 そんな気持ちを見透かしたのか、御曹司が悪魔の様な笑顔で笑った。
 牙が見えた。気がした。でも、彼の口調は微妙に穏やかだった。
「そうそう、瞳ちゃんの実のお父さんのお話だけど。」
へ?
「調べてくれる人がいてね、今ね、宮崎のある場所にいて6年はそこで暮らさないといけないんだって。ほら、瞳ちゃんが一人で暮らすなんて心配でしょう?それでね、加藤君の父君と今朝話し合ったんだけど、瞳ちゃんを養女にしようかっていってたよ。」
そこでキランと目が光った。
「彼女は15歳過ぎてるから本人さえよければすぐにでもって僕の弁護士も教えてくれてね。でも・・・・・」
そこで彼は言葉を濁した。
「まぁ、いいや。養子の手続きをしてから縁組みすれば段取り踏んてでいいかもしれないし。」
それから俺の頭の上に瞳のブラを乗せやがった。
「でもさ、父君が泣いていたよ。よりによって御曹司の僕の彼女と恐れ多くも結婚しようと画策するなんてって。」
何しろ俺の親父はこいつの親父の下で定年まで社長室室長を務めていた。多分子供の俺よりこいつの事を崇めているに違いないって時代錯誤人間だった。
「でも、上手く取りなしておいたから。君が怒られる事は多分無いね。君は純真に会社の為を思って行動したんだって力説しといたし。あ、ついでに、君が瞳ちゃんに甘すぎる事も会社で良くない噂になっているから、いっその事このごたごたを収拾する為に、君が本当に好きなのは瞳ちゃんだって事で、よろしく。」
よろしくって・・・・。よろしくって何だよ!よろしくって!!
「もし瞳ちゃんにその気持ちが有るんだったら、君の選択肢は無しって事で。父君もそれで納得していたよ。一日も早く婚約しろってさ。」
何も言えなくなった。ここまで、見透かされていたとは。 
 反論を考えていたその時。
「くぅ〜ん。」
奥の部屋から寂しそうな鳴き声。それからドアを引っかくかりかりって音が聞こえた。



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ドリカムの中村さん ご結婚おめでとうございます♪
これからも素敵な曲、期待しています。お幸せに〜。
(せっかくのタイミングなので入れさせて頂きました♪)

え〜、今日はこれから後もブログをアップする予定があります。
皆様よろしかったら後ほどまた遊びにきて下さいましね〜  廣瀬

by hirose_na | 2008-07-03 09:40 | 恋愛小説