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恋愛小説 ジンクス“7年目”13

メリークリスマス ♪

こんな日なので何か1つ ♪ 
ハッピーエンドをお届け ♡

13   アンサー

 少し戸惑った様に目を泳がせた彼は
「あっ、ほら、その多分、あれだ。」
私の手を取ったまま静かに深呼吸をした。



「用紙に君の名前、書いてたから。」
意味分からず何の用紙って首かしげる私に
「こっち引っ越して来るときの必要書類にさ。」
「って、何それ。」
どうして元カノの名前が必要だったんだろう。しかも携帯番号まで。
「おかしくない、それ。今時。個人情報保護法に引っかかるんじゃない?」
何だか変な感じ。
「もごもご」
って濁す姿が増々凄く怪しい。
「はっきり教えて。」
「だから、社宅の申請してたから。」
増々意味不明。彼は困った顔つきで床を見つめたかと思うと、ぐっと顎を引き上げた。
「奈保子は僕と結婚してくれるって思ってた。」
晴天の霹靂って感じ。
「へ?」
でも彼はちょっと肩すくめて話しを続けた。
「東京に戻れるって聞いて一番最初に頭に浮かんだのは、奈保子と一緒に暮らす事だった。浮気もしたけど、奈保子、許してくれるって。結局、僕の事分かってくれてるのは奈保子だけなんだろうなって思ったから。だからすぐに家族用の社宅申請出していた。石橋さん、その用紙、見たんだと思う。」
「それで私の連絡先を?」
妙に納得。でもね
「私そんな事知らないよ。」
だって、だってそれだったらプロポーズするのが先じゃないって。でもって
『お受けします。』
みたいな事言ってさ。私はね。私は一人でずっと悩んでたんだよ。すれ違ってさ、佐々木君の気持ちがわからなくってさ。何日も連絡無い日が続いたら
『これってまだ“別れたい”って言って来ていないって事だよね。』
なんて自分に都合のいい様に言い聞かせて気持ちを誤摩化していたんだよ。それなのに彼は
『大丈夫。』
って安心してたんだって。でもそこにあった
“温度差”
に気がついていながら私ははっきりさせようとか埋め合わせようとかしなかった。別れてしまったはずの今なら分かる。私たちはお互い違う人間で、違う感情持ってるから。好きだからって全てがジャストフィットする事なんかなくて、むしろその逆を行く。本当に
“好き”
って事は自分だけが思い詰める事じゃ無いんだって妙に学んだ気がした。だから
「勝手な事、しないでよ。」
そう言いながら許してた。
「ゴメン。」
彼、頭垂れた。
「今になって分かった。」
何となく、彼も同じ様に感じていた気がしてその言葉に私も頷いた。
「結局奈保子と別れて、でも仕方が無い、こんなものだったんだって思いながら、でも、本当に奈保子とつながらないって感じた瞬間、とっても辛かった。独りぼっちが惨めで、穴があいたみたいだった。だからしつこい位何度もメールした。そうしないと本当に途切れてしまうんだって。二度とつながらないって事がこんなに悲しいなんて。思いもしなかったんだよ。」
凄く嬉しい事を聞いた気がした。その気持ちはじんわりと胸に込み上がってくる。
「ねぇ、佐々木君。」
私は何となく甘える声を出していた。
「ん?」
彼は顔を上げた。
「もしかして、社宅の申請、まだ取り下げていないって事?」
すると彼はさっと顔を赤くした。
「あ、あうん。」
そんな曖昧な返事も今の私は良しとする。
「だったらさ、してよ。」
その意味を彼はすぐには分からなかった様でポケンとした表情を浮かべ、その後
「あ〜。」
と変な音を出した。まったく。どうして私はこんな男に惚れちゃったんだろう。今初めて気がついた。私は学生の頃に出会ったしっかり者の佐々木君より、目の前にいる優柔不断でとらえどころが無くて、それでいて結構単純な彼が好きなんだ。
「なによ、もしかして私からプロポーズしないといけない訳ですか?」
彼は少し口ごもり、
「少し待って。」
唇をぎゅっと噛み締めた。
「言いたかったセリフがあるから。」
ああ、もしかして私は幸せかもって思ったさ。もう駄目だって思ってたから。彼との将来も、自分の未来も。目の前の佐々木君はネクタイを直す仕草で襟元を正し、軽い咳払いをした。その表情は少し照れてる様に見えた。
「え〜、高橋奈保子さん。これからは高橋さんが“佐々木さん”になってください。」
は?私は一瞬固まった。え〜、ま、確かにプロポースと言えばプロポーズに聞こえる事は確かだけど。
「もしかして、引いてる?」
佐々木君が片方の眉をひそめた。
「ま、まぁね。」
まさかそう来るとは思っていなかったから。
「あのね、佐々木君。もし子供に、
『お母さん、お父さんに何てプロポーズされたの?』
って聞かれたとき、こうでしたって言っても大丈夫?」
すると彼は
『あっ!』
って表情になった。
「いや、待って、やり直しする。」
慌てる彼に
「駄目!」
私は大きく返事をしていた。
「だって私、もう返事しちゃったでしょう?」
なんてね。
「それって・・・・・。」
思いのほか佐々木君は鈍ちんらしい。
「返事、したよね?」
たたみかける私に
「あっ、うん。」
彼はへらっと笑って答えた。
「した。」
と。
「一生僕と一緒にいてくれるって、確かに答えたよ。」
そんなこと、言ってない。そう思いながら仕方がないかって微笑んでいた。
 こうして私たちの7年間はピリオドを打った。長かった様な、短かった様な。で結局思った訳よ。
“7年目のジンクスって有りだよね”
って。でもね。どういう結果を出すかって事は本人次第ってこともよく分った、そう言う事よ。全部、自分次第。これからの道のりもなんか長そうだな〜って思う事もあるけど、とりあえず、頑張りましょう。

                  おしまい


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 * あとがき *

お待たせしました。
だらだら連載でお時間頂きました。
Love ♡ ハッピーエンドです。

距離感のある恋愛、書けていましたでしょうか。

この二人は今頃
クリスマスより引っ越しで大わらわって感じですかね。

私は子供達のパーティーの料理を作りながら
何かを煮込む時間を使ってコレしています。
「忙しい!」
って言いながら楽しいです。
ル・クルーゼ(全部チェリーレッド♪)だけで
6個稼働しています。
他にもケーキとサラダとゼリーとフルーツ ♪
子供に向かって
「食べろよ〜〜〜!」
感じ?
残ったら?
もちろん旦那の夕ご飯 ♬

皆様も良いクリスマスをお過ごしください ♪

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by hirose_na | 2008-12-24 11:21 | 恋愛小説