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恋愛小説 ジンクス“7年目” 11

11    最後のお願い

 とりあえずストレス買いをしようと頑張ってみた。でも思いのほか貧乏性で。どのショップに行ってもこれだって思える品物って無くて。
「無駄買いは敵!」
なんて結局退散。



一粒200円のチョコすら買えなかった。その上いつか彼と結婚できたら言いなって思って貯め始めていた純金積み立てはべらぼうな金額になっていて驚いた。
「私って先行投資の才能ありかもね♪」
そう言ってランチタイムに恵に自慢してみたりして。ついでに
「ねぇ、恵。私ってさ、周囲に壁作っている気、する?」
思いつき聞いてみる。
「知らなかったの?」
彼女はあからさまに笑った。
「友達みたいな顔してるけどね、最後の砦は守りますって感じ。一番大切な事だけは絶対の秘密主義じゃん。でもそこがつき合いやすさだよね。その分アンジェラって他人に踏み込んだりしないから。」
完全に痛かった。
 別所にはしばらくはつき合う気ないって言っておいた。あれほど新しい男作るって意気込んではずが、私って駄目女。その上
「しばらくって事は期間限定ね。」
って返され油断できないな〜って思う。
「ブロークンハートなんですから、いじらないでください。」
だからご飯食べるだけってのも無視する事にした。こいつにはタヌキだ。でももしかしたら、こいつぐらいず太くてそのくせ寛容な人間の方が私には良いのかもしれない、そう思いながら7年間の底に沈んだ想いは抜けきれるはずがなく。
「はい、今日も頑張ってお仕事、しましょうね!」
カラ元気を膨らませて私は今日も声を張り上げていた。
 そうそう。あれ以来、週に何回か不信なメールが届く様になった。
『寂しい。』
って。携帯じゃなく、パソコンの方に来る。差出人の名前は数字で、アドレスはあいつの会社の名前入り。サインはSasaki。どうして別れた今になってこんな事するんだろう。
“つき合っていた”
頃よりメールの回数が多くて笑える。
『寂しい。』
だなんんて。私はもっと寂しかったんだよ、佐々木君。
『本社の社食がカフェテリアになっていた。結構旨い。社外の人も同伴だったら入れるよ。』
って、あたし達はお友達に戻ろうとしているの?こうして本当の意味で離れてみて初めて自分の気持ちに素直になってる気がする。惰性でも、やっぱり佐々木君の事好きだったって。そのくせ上辺だけの
「好き。」
に逃げて自分の気持ちの中の
「好き。」
だけでいっぱいいっぱいになってたって気がした。独りが辛くって、でもそれを我慢してたら彼に気持ちが伝わる、そんな気がして無理していた、そんな感じ。自分が大切で、二人の関係を守る為に自分に嘘ついてたなって。今だから思える。それを佐々木君気がついていたんだなって。こうしてメールもらう様になって、彼も私との距離に戸惑っていたのかもしれないって思えた。何だか後悔だ。
 丁度1年前、彼の首筋に見つけたキスマーク。責めるべきかどうか、目の前真っ暗になりながら必死で考え、1秒後には
『気がつかなかった事にしよう。』
って結論出してたっけ。きっと彼の方から別れるっては言い出さないだろうから、私が我慢してればこのまま関係は続いていくって。波風立てて一気に別れる位になるならいっその事って。寂しいね。こんな女の自分が寂しいね。

 彼との事以外は順調で、この前のプレゼンはばっちり上手くいっていた。
「ほら、言った通りだろう?」
別所が笑い
「二人でお祝いをしようか。」
って耳元で囁くから
「みなさ〜ん、金子さんが今回のプロジェクト成功のご褒美に美味しいもの奢ってくれるんですって〜」
ってばらまいてやった。みんなから湧き上がる
「ごちそうさまです〜」
のかけ声。結局その夜は寂しいひとり飯の予定が、いつの間にやら盛り上がるイタリアンのお店の中にいた。何だか日常は変わらない。そのはずだった。そこに届いた、発信人不明の番号。出てやるはずが無く放っておいて、しばらくして留守電聞いて
「嘘だ!」
って叫んでしまうくらいパニクった。それは佐々木君の会社の上司からのもので。
「ご免なさい!急用できました!」
彼が怪我をして救急病院に運ばれたって言う知らせだった。
 病院は都内ですぐ近く。絶対地下鉄使った方が早いって分かってるけど、焦るばっかりで乗り継ぐ自信が無い。
「寅ノ門病院、お願いします!」
タクシーに乗り込み、運ちゃんを急かした。現金足りないかもって思いながら、大丈夫カードで払えるって言い聞かせた。
『出先で事故に巻き込まれたみたいなんだよね。何だか詳しくは分からないけど、大変らしくって。兎に角、急いで行ってもらえますか?』
どうして私に電話がかかってきたのか分からない。でも電話の向こうの人はおろおろしていて
『血が沢山出てて、怪我がヒドくってヤバいらしいんで、心の準備してってください。』
って怖い事言う。
「心の準備って何だよ。」
って思った。二度と会えないって事なのかなって。信号で車が止まるたび、誰でも良いから蹴飛ばしてやりたい気分だった。本当は大好きだって、やっぱり佐々木君が良いんだよってきっちりそれだけは言っておきたかったって。せっかく彼が東京戻ってきたんだからやり直したかったって。ずっと待ってたけど、結婚して一緒に暮らしたいって思ってたって。それからいつか二人で縁側座ってひなたぼっこしながら猫の背中を撫でる生活したいんだって。もう叶わないのかもしれないけど、もう一回告白しても良いですかって神様にお願いしてた。


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* あとがき ♪ *

これからあと2話でラストの予定です。

所でアンジェラ・奈保子みたいな感覚って
遠恋の時って無いですか?
離れているから寛大でいなきゃいけないよ、とか。
あと、普通に恋愛していて
言い出せずに気持ちが溜まって、
でもそれを溜めているのがある意味美徳みたいに感じたり、
でも気づいてくれないと物凄く腹が立つの。
今回ここか来たかったな〜な心情の部分でした。

                               

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by hirose_na | 2008-12-16 21:51 | 恋愛小説