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恋愛小説 ジンクス“7年目” 8 R15

第八話  サプライズ

「えっあっ、その。」
私はしつこく携帯に話しかけていた。



すると
「もしもし?雨強くって聞こえないんですけどぉ。」
彼も携帯に向かって大きな声で話しかけていて。でもその目は私を見据え、これっぽっちもふざけてなんていやしなかった。顔、引きつるの止められなかった。
「こんばんは。」
その声に思わず下がってしまい、そこに佐々木君が身体を割り込ませた。
「はい、こんばんは。お久しぶりです。」
パチン、彼の手の中で携帯が大きな音を立てて閉じられ、
「で、どういう事?」
視線が頭のてっぺんからつま先までこれぞ舐め回すって感じで這って行く。
「だから。」
電話では言えた言葉が出てこない。
「・・・・別れようって。」
「誰が?」
「私と、佐々木君。」
大きなため息をついてドアを閉め、彼は髪の毛をぶるぶるっと払った。
「奈保子が始めた関係でしょ?」
その言い方が、どれだけ彼にその気が無くってつき合い始めたか物語っていて。
「だから、私が・・・・」
言葉に詰まったけど、最後まで言ったさ。
「終止符打ってあげるんじゃん。」
そう言いながら視線落とし、後悔してた。別れを告げながらそれでもこの人が好きだなって噛みしめてたから。何にも考えず、目の前にいるこの人にキスしたいなって。触れたいって、一番傍に居たいんだって。だから悔しかった。もうお終いなんだから。
「見覚えある。」
彼は指で私が着ているワンピをぴんって引っ張った。
「あの日も雨だった。」
それから両手首つかまれて、吊るし上げられてみたいに万歳くらって、彼がびしょ濡れ身体を近づけた。
「これ着てどこ行く気だった?」
それは一目瞭然で。ピンクの目元にラメもしっかり入って。グロスもたっぷり乗っている。こんな気合いの入った姿、佐々木君にはしばらく見せた事無かった。
「浮気、してんの?」
その言葉に跳ねそうになった。
「ち、がう。」
こんなに怖い佐々木君を見るのは初めてだ。
「じゃぁ、何よ。」
「ごっ、合コン。」
上手く嘘つけなくて。
「いいじゃん、別に。佐々木君だって行った事ぐらい有るでしょう?それにさ・・・・。」
「それに?」
「きちんと別れてから行くつもりだったし。」
見下ろされ
「そんなの、都合良くね?」
腹の底から沸き上がってる、そんな声だったから。思わず
「全部佐々木君が悪いんだもん!」
彼に全部丸投げした。
「かまってくれないじゃん。メールもくれないしさ、電話だってそう。会うのだって半年に1回だよ?そんなの変だよ。好きだって言ってもらえて記憶も無いんだよ?普通そんなのつき合ってるんて言わないから!」
もう、吐き出しちまえぃ!
「気持ちだけでも傍居たいのに確かめようが無いでしょう?連絡だってろくにくれないしさっ!大事にされてないっなって。別に誕生日にプレゼントくれなんて言わないけどさ、せめて生声でおめでとうぐらい言ってくれるもんじゃないの?ところがどっこい、届いたのはメールだけだよ、しかも夜遅くにさ。いかにも忘れてた、みたいな?そしたらさ、私の事、どうでもいいんだなって思うじゃん?」
私を貼付けていた彼の手が緩んだからその手を引き抜きわざとらしく手首を擦ってみせた。
「じゃぁ何?俺がご免なさいすれば全部丸く収まるの?」
「当たり前!!」
思いっきり吐き出したさ。
「寂しいんだから!!寂しいんだから!!何放っといてんのよ、馬鹿佐々木!」




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by hirose_na | 2008-10-15 16:08 | 恋愛小説