恋愛小説 ジンクス“7年目” 3

第三話   ハッピーバースディ

 こう見えて私の日常は忙しい。とりあえず朝は6時起き。仕事がらみで、メールチェックでしょ、サイトのチェックでしょ、何か食べて、化粧して。



 仕事が終わるのは早い。ほとんど7時ね。でも、だからっていって気が抜けない。会社方針で残業はしないけど、やらなきゃいけない事だけは沢山有る。必然持ち帰りになるのだけど、自分ひとりじゃどうにもいかない場合が有る。
 でもって、気の合う仲間達で
『こっそり別会議』
なるものを開く。会社から3ブロックはなれたオープンススペースの美味しいカフェ。
「やっぱ抹茶カフェラテでしょう。」
なんてクリームヒゲつける後輩の中本を笑いながら、自腹のパソコン(しかもマイクロソフト2000とパワーポイント2000搭載だよ。会社で使ってるヤツはコレより2世代前だし。)
立ち上げて、プチ会議。
「リミットは8時。それまでに終わったら私がみんなにおごるから。でも、それまで上がらなかったらおごってもらうからね。」
私は仕切りや。だって一応チーフだし。
 良い上司も沢山見てきたけど、嫌な上司にもさんざんな目に有ってきた。だったら自分が嫌な上司になりたくは無い。やらなきゃイケない仕事ならさっさと済ますが鉄則さっ。
 話し合いは思いのほかスムーズ。コレで明日の報告には間に合うだろう。万歳!しかも結構良い案も出てきたし。で、メドが立ったのが8:10 。ま、いっか。薄給の中からおごるかぁ、なんて思いながら頬杖をついた。
 みんなもほっと緩んだみたいで、何とはなしに無駄話も出てきたりして。
「そういえばさ、御曹司秘書の加藤さん、彼の奥さん、この前会社来てたんだよ〜〜」
なんて恵が言い出した。すると他の女の子が目を輝かせた。
「え〜、本当ですかぁ?」
噂によると犯罪すれすれの幼な妻らしい。女はそういう話題が大好きさっ。
「写真とっちゃったぁ〜。」
って見せてくれたのは、携帯の微妙なアングル。
「これ、盗み取りじゃん!」
思わず言っちゃったけど、その子の可愛さにびっくりだった。良く似合ってるミニのスカートからはほっそりした足がカモシカみたいに覗いていて、長い巻き髪に、小さく小首をかしげる仕草。それから加藤さんの腕に甘える様に指絡めて。悔しいけど、私が無くしたものばっかり。
「マジ可愛ぃ。なに、セシル着てる?初めてみた、こんなに似合う子。」
「バービードールだね、彼女。」
「凄っ、てか何、コレ犯罪じゃねぇの?彼女幾つだよ?絶対20いってないね。」
「確かに、犯罪だ!」
不必要に盛り上がったその時。みんなが
「あっ!」
て、顔を見合わせた。
「?」
私の肩に乗る、大きな手。
「げっ。」
モロ上司。私の中では別名別所哲也がにこやかに笑っていた。
「エスプレッソ、ダブルで。」
 結局彼はそのうさん臭いスマイルで見事に情報収集を果たし、(何やってたか恵が全部ばらしてくれた)その場を9時前にお開きにした。
「まぁ、明日も頑張ってよね。」
そう言いながら伝票を持つ。
「あっ、それ。」
どうせおごるつもりだったし、こういうときだけ部下の顔をするのは嫌だったから。
「いいですよ、そんな。」
レジに向かう彼からその伝票を引っ張ろうとした。
「そういえば。」
別所(本名金子)が手を緩めずに言ってきた。
「今日は君の誕生日だよね。ハッピーバースディ♪」
だぁ〜〜!その白い歯。妙にぷくぷくした顔立ちと童顔。でかい身長。フェミニストっぽいもの言い。やっぱあんた、別所だよ。出来過ぎてっと、怖いっす。
「それだったら今度もっと高いのおごってください。」
顔引きつらせながら伝票奪ったさ。すると
「仕方ないな。じゃ、そういう事で。」
彼は千円札を私に押し付けると、手を上げて(コレが結構目立つ)さよならをした。
「アンジェラさ〜ん、誕生日ですかぁ?」
お調子者の恵がにやっと笑った。私はこの眼鏡の所為ですっかり
“アンジェラ”
に呼び名が変わってた。
「年ばらすなよ!女は25過ぎたら永遠に25なの!」

 帰り道は中本と一緒。彼は去年入った男の子。本当は男の子と言う年齢では無いのだけれど、わんこのような純朴さがあって、どうしても子供扱いしてしまう。 
 その彼が
「先輩、今日誕生日だったんですね、おめでとうございます。」
なんて、駅の横の花屋さんで小さなブーケを買ってくれた。
「いやだ、ゴメンネ、気を使わせて。」
所々で角出しているラベンダーが不細工だけど、それはとっても良い香り。
「でも、アリガト。とっても嬉しい。」
自然に顔がほころんじゃったよ。
 その花束を家の花瓶に飾っていると、聞き慣れた着信音が一人の部屋に響いた。内容?だいたい分かってた。どうせ、おめでとう、でしょう?
『誕生日プレゼント?うん、もらったよ♪おめでとうって、メール。』
『つ・つ.つ、都合いい、お・お・女で〜す♪』
どっかのお笑い芸人思い出した。
「めげない、めげない!」
メール見る気にもなれなくて、私はそれを無視する事にした。


                       つづく             

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予定していたより更新が遅くなってます。
いかんです! 頑張ります。
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by hirose_na | 2008-08-30 23:52 | 恋愛小説