人には言えない! 4

 4   未成年に売るんじゃねぇ!

「ゴメン。」
もう一度言うとうつむいてしまい。静かに
「ゴメン。」
泣いていた。



 両手で顔を被い、肩振るわせて。長い巻き髪が彼女の面を俺から隠し、まるで小さな女の子みたいだった。それは初めて俺たちが暮らし始めた夜の瞳を思い出させる。そうだよ、この子はまだ子供だ。俺は34。この子の倍の年を生きていた。
 彼女のその泣き声は少しずつ大きくなっていき、最後には
「わん、わん。」
と聞こえていた。
「泣くなよ。」
赤ちゃんを抱く様に軽く彼女を引き寄せ腕の中に取り込む。酒の所為なのか、泣いている所為なのか、その体は火照っていて、まるで子猫を抱いているようだった。わがまま子猫、そう思う事にして頭を撫でてやる。
 そう言えば瞳が初めて家に来た時もこういう風に頭撫でてやったっけ。
「しょうがないヤツだな。」
 ようやっと泣き止んだ彼女が俺の胸から頭を上げた時には、オークレーの真っ白いTシャツに真っ黒いマスカラの痕。
「あっ・・・。」
さすがに彼女も悪いと思ったらしく、また泣き出しそうに表情を沈ませるから
「不細工だなぁ。」
パンダみたいな顔で俺を見下ろしながら
「ひでぇ顔。そんなんじゃ彼氏も出来ないぞ。」
とおでこを突いた。
「五月蝿い。」
その上ごしごしと目元をこするったりから、パンダが指名手配犯になる。
「鏡、見て来いよ。」
膨らんだ彼女の顔があまりにも可愛くって、思わず笑っていた。脱兎のごとく洗面所にこもった彼女が
「コンビニの袋、とってよ。」
少しかすれた声で言う。
「はいはい。」
酒の詰まったコンビ袋を持ち上げの中をのぞくとあるわあるわ。全く、これを全部飲む気だったのか、なんて。その中に別包装の紙の袋が入ってあり
「これか?」
化粧品でも探しているんだろうと親切にとりだし立ち上がった。その時何かが変だと気がついた。あまりにも軽いその包みに。
「コンドーム?」
まさかな。その時俺の頭をよぎったのは、今晩の二次会を楽しみにしている、みたいな事を言っていた彼女の言葉。自分がこんなんだからって、思い過ごしだ、サニタリーだろう。そう納得したはずの俺の耳に届いたのは
「なっ、何してんのよ!」
の悲鳴だった。洗面所を飛び出して来た瞳が乱暴にそれを取り上げ、
「返して!」
中身が滑り落ち、それがころんと床に落ちる。
 1/2 ダース、六個入り。ピンクの薔薇の花びら。
「これ、今晩使うつもりだった訳?」
彼女は動けず、俺がそれを拾う。パッケーには
“女性に優しい使用感”
の可愛いポップ。一気に血の気が引いた。キレイに化粧を落とした彼女が叫ぶ。
「袋とってって、言っただけなのに!!どうして中身、出す訳!」
もう、そんな事どうでも良かった。

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本当は今日中に Left Alone 更新の予定だったのですが、
言葉がいい所で落ちてゆかず、断念。
今しばらくお待ち下さい。
出来る限りいい形で投稿したいと思ってます。
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by hirose_na | 2008-06-05 22:23