人には言えない! 3

3  愚痴りたいのは俺だっつぅの
  
 未成年の飲酒は法律で禁止されています。
 そんなことを言ったら、
『何よ、禁止されてなきゃ良いって事じゃん?大人っていい加減。』
そんな戯言が聞こえてきそうな勢いだった。



 俺のグラスを取り上げ、ぐいっ、ぷはぁって・・・・。しかも仁王立ちだし。その豪快な飲みっぷりに半ば呆れかけていた。
 彼女は17。そして俺の血のつながらない姪で、つい1週間前までは一緒に暮らしていた。彼女の両親が亡くなってからの6年間を。
 それなのに、1週間。1週間見ない間に彼女はずいぶんと変わっていた。酒を飲むなんて知らなくて。その上初めて見る大人びたタイトなスカートに、胸の開いたブラウス。空きっ腹にアルコールの頭は少しびっくりしながらそれを見つめていた。
「何見てんのよ。」
彼女が唇を尖らせた。
「いや、まぁ。」
言葉を濁すと、当てつけの様に
「本当はね、二次会が有るって言うから気合い入れて服買ったのにっ!」
って、胸を張ってみせた。
「はいはい。」
ため息だぜ。
「お前が十分大人だって事は分かったから。」
すると彼女は
「ふんっ。」
って鼻を鳴らし俺の隣りに座った。
「よくまあ、冷静でいられるわね。」
「まぁな。」
取り上げたグラスに新しいのを注ぎ、頭を掻いた。
「しゃぁねぇだろ。なる様にしかならないから。それに彼女が御曹司の元カノなのは百も承知だし。あいつが出てきた時点で俺は完敗でしょ?」
金持ちで、スタイルよくって、イケ面で。本当は彼女にぞっこん惚れてて、しかもだよ、お腹の子の父親だぜ?あんな風に登場されてついて行かない女がいるかいな。まぁしかし、彼女が妊娠しているって事は俺たち二人だけの秘密だったから、他の人間にはそこんとこの事情は分からない。ましてや俺たちが抱えていたそれぞれの事情ってヤツは。絶対人には言えない。口が裂けても言えやしない。だから瞳が言う様に、彼女と御曹司が一方的に悪者で、俺がスーパーお間抜けちゃんだと思われるのは仕方が無かった。
 そう、仕方がないのさっ。
 新しいグラスに氷。それから袋から取り出したメロン味のチューハイ。それを乱暴に注ぐ彼女の指先。ラメと言うのか。マニキュアのお星様がキラキラ光っていて、酔いの回り始めた俺の目の奥がちかちかいっていた。
「諦めましたぁ〜ってことだ。」
もうどうでも良いやってな。
「いいわよ。そんなに言うんだったら。」
その声は異様にふてくされていた。
「乾杯してあげるわよ。は〜い、伊佐武ちゃん、結婚直前に破局。おめでとぅ!良かったわねぇ〜。」
すんげぇ、ムカついた。けど、我慢したさ。だって大人だしな。
 彼女はアルコール4%を水みたいに飲み干し、そして勢いついでにマシンガンの様にしゃべりだした。
「だいたいさぁ、結婚決めるの早すぎたのよ。」
「はいはい。」
「あの女、元カレと別れてすぐ伊佐武ちゃんとつき合い始めたんでしょう?」
「はいはい。」
「結局、未練たらたらで前の男の事選んだんじゃない。だったら何で伊佐武ちゃんとつき合い始めたかなぁ。いい加減だよ。そこ、間違ってるよ。」
「はいはい。」
「ってか、打算的だよ、あの女。ほんと、最低!結局あの男って伊佐武ちゃんの会社の会長の息子なんだって?なによ、結局金持ちがいいって事?一般人だからって馬鹿にして欲しくないわね。」
「はいはい。」
「伊佐武ちゃんも伊佐武ちゃんだよ。何でがつんと怒ってやらない訳?肩落とすばっかりでさ。アレじゃ、みんなに誤解されるよ?だから逃げられたって思っちゃうよ?悪いのはあの女なのに。あいつが二股女だったって言うのに、何で騙された伊佐武ちゃんがコケにされなきゃいけない訳?ひど過ぎ!!」
「はいはい。」
「あんな馬鹿女!神様が絶対天誅下すからね!こうなったら地獄に落ちればいいんだ!いっその事車にでも引かれちゃえ!」
その顔は醜く歪んでいて。
「瞳!!」
そんな言葉、こいつの口からは聞きたくなかった。
「いい加減にしろ。」
テーブルに叩き付けたグラスが激しい音を立てる。勢い余って床に跳ね、褐色の液体が散って、割れる、そう覚悟したはずが、それはころころと転がってテーブルの下へと入り込んだ。
 ため息が出た。そうさ、結局俺が悪いんだから。無性に、悲しくなってきた。グラスを拾う気力さえなくなり
「悪口なんか、聞きたくないよ。」
それでも拾わなきゃって伸ばした指先が震えていた。
「ゴメン。」
瞳の声も震えていて。時間さえ止まった気がした。

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多分なのですが、今日中にブログをもう1つアップすると思います。
大事な、というか ♪♪ なお知らせです。  廣瀬
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by hirose_na | 2008-06-06 16:24 | 恋愛小説