四番目の男 2


 彼が御曹司だって知ったのはそれから少し後。
「優花、やるわねっ。」
って先輩が言ったから。
「あら、狙ってたんじゃないの?」
その人の口調はとっても意地悪だった。
「でも諦めた方がいいわよ。釣り合わないから。住む世界が違うんだから。」



 彼は御曹司。財閥系の御曹司。名前をグーグールで検索すればすぐ分かる。裏ネットにかかれば会社の法廷相続順位が四番目ってことまで。
「面倒くさいのよ、そう言うの。」
飲みに誘われて教えてもらった。っていうか、一方的に教えられたって感じ。
「資産が半端じゃないから、税金管理で相続権を散らすんだから。
 それに一人に財産が集中すると、その人が死んだ時企業全体が大変でしょ?
 だから近い血縁者10 人ぐらいしぼってみんなが相続権を持つの。
 そんなんだから、お互いの伴侶は同様のバックグラウンドがあるか血筋が良いか、   どっちかじゃないといけないのよ。」
ね、もの凄くリアルな話でしょ?
でもその時の私は、そんなのへっちゃらだった。
だってそうでしょ?23歳なのよ。子供じゃないけど大人でもないの。
分別臭いのってもっと歳がいってからでいいって、その時は思ったの。

 それにね、彼女がひがんでいるの、分かってたから。

 でもね、気づいちゃった。彼のピアジェは一つじゃない。いくつもある。
 緑ナンバーの社用車のバックシートにはレースのカーテン。
 クリスマスのホテルはスイート。
「高かったんじゃないの?」
不安になって聞いたら
「さぁ、どうだろ。実を言うと忙しくって、自分で手配したんじゃないんだ。ご免ね。」
その晩支配人って人がシャンペンを運んで来た。
 年末はウィーンのジルベスタコンサートに家族揃っていく事になっているから帰って来たら一番最初に電話するって言われた。
 寂しい思いさせるからお土産好きなもの買ってあげるって言われて、ふざけて
「クロコのケリー。」
って答えたら、少し届くのに時間かかるけど注文してあげるって言われた。
「出来上がり次第日本に送ってもらうから。刻印は “ YOUKA ” がいいかな、
それとも“ YUKA ”?」
 帰って来た彼は日焼けしていて
「シェラネバダで滑って来たんだ。楽しかったよ。今度一緒にいこうね。」
だって。・・・・分かんないよ、そんな事言われたって。
 だからもう駄目だなって思った。これがそういう事なのかって。先輩の言う所の
“ 住む世界が違う ”
ってやつ。
 好きなだけじゃ、駄目なのよね。
 私が引いてくの分かったんじゃないかな?彼はそれまでしなかったプレゼント攻撃を始めた。
 日比屋花壇の花束、ゴダイバのチョコレート、ヘルメスのステーショナリー、マイテンのティーセット、ティファインの箱に入ったネックレス。みんな私に似合わないものばっかり。
 そんなものが欲しいんじゃないのに!!

 だから終わりにしたの。
「まだ、足りないの?」
って彼が言うから。
「足りなかったの。」
そう答えたわ。だって、そうでしょ?私が本当に欲しかったのは、あなただけだったんだから。
 一緒にお茶して、シナモンと遊んでくれるあなたが好きだったの。話を聞いてくれるだけで良かったのに・・・・。

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by hirose_na | 2008-05-03 15:56 | 小説インデックス