恋愛小説 タダより高いものは無い 1

恋愛小説 タダより高いものは無い

花の応援部・団長 颯(はやて)
彼女はどんな時でも男前。でもだからといって恋愛も男前とはいかない様で……。
部活も終わった高校三年生のちょっと甘いお話です。

* 目次 *

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最終話 


なんと、全年齢対象です♪







 僕は戦士だ。甲冑を身に纏い、右手には聖なるソードを持って妖怪どもを打ち倒す。僕は怯まない。妖怪の手先になって襲って来るワニ達の手を切り落とし、勇敢に立ち向かうう。敵のすみかはもうすぐで、絶滅も近い。
 僕がここにいるのには訳が有る。それは僕の両親が妖怪に殺されたからだ。僕は敵(かたき)を取り、そして村人達に平和を取り戻すのだ。
「しゃらくせぇ!」
大きく振った剣はワニどもを凪ぎ払い、僕は彼らが住む水路から、絶壁にへばりつく様にこしらえてある階段を駆け上る。とその時
「あっ!」
強い風が吹いて僕の胸の奥に閉まっていたはずの大切な宝物がすり抜けた。それは舞いながら水路に落ちる。
 僕には幼馴染がいる。彼女は昔からお菓子を作るのが得意だった。牛乳と砂糖と卵、それから小麦粉を練って作る秘伝のジンジャー・クッキーは最高で、僕はいつも彼女の家に遊びに行っては食べさせてもらったものだった。僕が村を発つその日、彼女がそっと渡してくれた袋の中にはそのジンジャー・クッキーがびっしり詰まっていた。
「無事に帰って来てね」
あの子の目は潤んでいた。
 最後に残った1枚は食べる事ができず、今日の今日まで僕の胸の懐にしまっていた。そう、それはお守りだ。僕が帰るまで彼女が無事でいてくれる様にと。だから僕は思わず手を伸ばしてしまったんだ。
 バランスを崩した足下に、崩れ落ちる岩場。僕が伸ばした左手は真っ直ぐにワニの口めがけて落ちていった。目の前に閃光が走り、フラッシュの中に吸い込まれていく。そして……。

「うぁあああ〜〜〜〜!!!」
颯(はやて)は絶叫し床に叩き付けられた。そこは見覚えの有る風景、自分の部屋、なぜか見上げるベッド。頭を起こし机の上に目をやると
「嫌だ、遅刻じゃん、完璧に!」
時計の針はすでに7時30分を過ぎている。一階からはワッフルの焼ける様な甘い香りが漂い、今日の朝ご飯が彼女の大好物だった事を教えてくれていた。
「どうして起こしてくれなかったの?」
彼女は服を着ながら階段を駆け下りる。
「自己責任」
投資が趣味の母親はテーブルの上のワッフルにフォークを突き立てた。
「もう、最悪!」
彼女は自転車のペダルをこいだ。水で洗っただけの顔は突っ張って、髪の毛は好き勝手な方向に暴れまくり。絶対に
“女の子”
じゃなかった。身長170センチ。小さくない。坂道は立ちこぎで一気に駆け上がり、下(くだり)もノーブレーキでコーナリング。
「先輩〜! お早うございます!!」
学校近くでようやっと時間に追いついて、顔の知らない後輩達から歓声を浴びる。
「おはよ〜」
息を切らしながら彼女は自転車置き場へと向かった。そして見上げた真向かいの校舎、三階。彼はちょっと目を丸くしながらそんな彼女を見下ろしていて。そっと振られる片方の手。女の子の様に整った顔がふわりと笑顔を見せる。颯はハッと立ち止まり、思わずぺんぺん草の様に飛び跳ねている髪の毛をそっと撫で付けていた。
 季節は9月。三年生は引退し、受験勉強に勤しみ始める。スポーツ名門校のこの高校は学校指定のジャージに限り授業中も着用が許可されていて、半数の生徒がそれを着用していた。颯もそんな一人だった。しかしこの季節になると様相が違って来る。今までの生活からシフトしなければいけないのだから。颯も慣れない膝上のスカートをはき、
「風邪引きそっ」
なんて事を言いながら机に向かった。そこにやって来た底抜けに明るい体育教師兼野球部監督が
「やぁおはよう!」
出席簿片手ニッカりとに微笑む。
「今日もみんな元気そうで何より。ところで応援団長」
応援団長とは颯の事だ。
「お前、野球部の花形にやっと愛の告白されたんだって?」
どこで聞きつけて来たのかあっさりすっきり彼女の昨日の秘密を暴露した。
「嘘っ!」
「マジ?」
花形は一回戦敗退とはいえ甲子園出場組の捕手、キャプテンで
「そう言えばお前達二人、暑い夏を過ごしたものなぁ、うんうん。愛が芽生えてもおかしくないか」
担任はニヤニヤと笑い、クラスのみんなは沸き立った。
「先生、暑い夏って、この二人、どんな夏を過ごしたんですか!」
日頃滅多に手を挙げない生徒達がピンと伸ばした指の先を天井に向ける。
「もしかして甲子園会場でいちゃこいたりとか?」
「やっぱその時の楓って学ラン?」
応援団長が野球部の応援をするのだから学ランに決まっている。女の颯がやっているからある種コスプレだ。
「当り前だろう?」
「うわっ! 他の学校の生徒にBLだって突っ込まれませんでしたか?」
「まあ、有りだな、それは」
彼はその時の様子を思い出し、妙に納得した様に頷いた。
「うんうん。二人で打ち合わせと称して壁際の隅っこでしょっちゅうこそこそやってたからなぁ」
本当と言えば本当なのだが、完全に周りを誤解の渦に巻き込もうとする意図が見え見え。
「このセクハラ教師!」
颯のどぶとい声が教室の壁を揺らし。みんなの笑い声は増々大きくなった。
 そしてこの時、真っ青になった一人の少女がうつむきながら颯を盗み見て、膝に乗せていた拳をぎゅっと握った事に気がついていたのは、窓際に座って様子を傍観していた少年ただ一人だった。



  小説インディックスへ      2へ続く

高校生のトランスジェンダーものです♪
男らしい女の子が好きな人の前では可愛い女の子になっちゃう
と言うパターンがやはり好き!

この前 市川亀治郎さんが出演していた
蛭川シェイクスピア 十二夜 ロンドン公演 の映像をテレビで拝見しました。
亀様、上手い!! マライア役(姫様の侍女)でしたが
どう見たって主人公を食っていた。惚れるわ〜。

男性が女性の役をするシェイクスピア劇は
妄想をかき立ててくれるのでした♪

この作品は四日連続で更新予定です♪

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by hirose_na | 2009-09-15 19:18 | 恋愛小説