どうしようもない程ドイツ文学

kanonちゃんお勧めの映画  『愛を読む人』
時間がなくて見には行けなさそうなので、
文庫本で読んでみました。



感想は、
『これはどうしようもない程、ドイツ文学だよね』
です。

良きにつけ悪きにつけ。

ああ、なんて身もふたもない書き方。

だって、主題が難しいんだもの!!!

映画のプロモーションに出て来る
“500万人が涙した”
は嘘っぱちさ!
話しの重さに心が沈みますから。

文章全体は
“冷徹”
です。なのですが、少年が彼女を語る
“目”
の瞬間だけは違います。そこだけは色鮮やかで、まるで
モノクロの画面がいきなりフルハイになったみたいです。
そこに踊る
“恋の躍動感”
は見物です。
その圧倒的な力によって、
“母親の年齢に近い様な年上女性と15 歳の少年”

“スキャンダラス”
な部分は一蹴され、枠組みを越えた
“恋愛”
を感じました。

以下、ネタバレを含む深読み♪

主人公 ハンナ が肉体的に持つ
“ナチズム的要素”
について作者は言い切ってはいないと思いますが、
その点をもっと浮き彫りにしてもらっても良かったかなと思います。
私は彼女の身体的特徴をナチに結びつけて評価しましたが、
それが正しいのかどうか分かりません。
ただ、その前提が有るか無いかで話しの内容がぐっと変わって来ると思うのです。

彼女はブロンドの髪に青い目。秀でた額、高い頬骨。白い肌。
たくましいと同時に女らしい体つき。
あの時代に
“ドイツが望んだゲルマン民族(アーリア人が正解かな?)らしさ”
を外観的に持っていたと思います。
つまり
“選ばれた人”
なのですが、彼女の話し方もそうですし、文盲とう言うハンディからも分かる様に
彼女の家は裕福ではなく、教育を受ける事すらできなかった。
その理由を彼女はあの当時の狂気の原点とも言える
『ユダヤ人がこの世界を破滅させている』
という血迷った思想の中に見いだしてしまったのではないか、
そう感じました。

彼女は美しく聡明で、教育を受け将来のドイツを構成する大切な一員になるべく
産まれて来た様な女性だったはずで、
彼女もそれを強く望んでいたのだと思います。
でも、貧困がそれを許さない。
それに対して裕福なユダヤ系の少女達は、
“自分達の国ではないのに”
金の力で高い教育を受ける事ができる。
その部分に不合理を感じていたと思います。
ですが彼女は賢い女性ですから、その部分に対する恨みを努めて
“忘れようとした”
気がします。ですから後半で重要になって来る裁判の主題である
彼女がナチで働き、行った行為は
“仕事に忠実だった”
だけではないかと思うのです。
彼女は良い意味で、勤勉だったのです。
ただあまりにも勤勉だったため、本質を見る事ができず、
状況を見誤ったと感じました。

そして
彼女がそこ(受刑)までして隠したかった秘密、それは
“文盲である事”
ではないと思います。
文盲であるが故に産まれた
“自分の醜い感情”
だったのではないでしょうか。

ちなみに私が本の中で泣いたのは(←結局泣いた)
彼女が亡くなった後
刑務所の所長が読み書きができる様になったハンナの事を
“ぼく”
に教える場面です。
それは彼女が過去を乗り越えた瞬間で、
その事を彼と共有したいと願った切実な場面だと感じました。

そしてラスト、このような状況下でも頭を働かせ冷静に自己分析していたはずの
“ぼく”
に潜んでいた恐ろしく生々しい感情が
鋭く尖ったナイフになって剥き出しのまま翻る、
そんな一言が潜んでいます。
『文盲はユダヤ人には似つかわしくない問題かもしれませんがね』
これは生き延びた娘に対して浴びせられた侮蔑だと思います。
もちろん彼女はそれに気がつくはずもありません。
しかもある意味、彼女を恨む根拠はありません。
ですが間違いなく彼の中に潜んでいた
邪悪な部分、仕返し、
『もしもユダヤ人さえいなければ』
という本当に隠しておきたい、もしかしたら自分でも気がつかない、
本音、それが反映された狂気の一言だと思います。


さてさて。

『あなただったら』

彼女が公判の中で裁判官に問いかけます。

『あなただったら、何をしましたか?』

聡明で理知的であるはずの裁判官がそれに答えを用意する事はできません。
正常な人間を正常ではなくさせる、それが戦争・諍いだという事を
この部分で浮き彫りにさせてくれます。

……。
まだまだ書ける!!
感想、いくらでも書ける! 困った!!
他の登場人物に込められたエッセンスも濃いからねぇ。


優れた文学というものは、
沢山の価値観を与えてくれる。
何度読み返してもそこには新しい発見が有り、
変わらないはずの文字の意味は
常に流動性を持つ。

そんなことで締めくくらせて頂きます。

映画、レディスディに見に行っちゃおう♪


映画を見たり本を読んだ方、
良かったらご自身が感じた事を教えて下さいな。
自分とは違う考え方、感じ方をする人の話しを聞くのが大好きです。


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by hirose_na | 2009-07-06 10:35 | Life !