恋愛小説 クリスマスの悪夢 10 R15

10   嫉妬

 それから数週間が過ぎ学祭のほとぼりも冷めたと思われた頃、校門を出て少し行った角の所でいっちぃは人待ちの亜莉沙とばったりと出くわした。



「よう。」
誰を待っているのかは一目瞭然。彼は二人の交際が発覚した後も特に態度を変える事なく彼女に接している様に見えた。そして二人の共通点の1つであるバンドの方はプロデューサーから
「良いんじゃない?」
の返事をもらってはいたものの、具体的な話しは一向に進まず全員がイライラしながら過ごしていた状況だった。その為みんなで演奏する楽しさよりもとりあえず各自が練習してレベルをあげよう、そんな流れになっており全員が集まる事は減っていた。だから近所に住んでいるとはいえ学部の違う二人が顔を合わせるのは久しぶりの事だった。
「お元気?」
ふざけながら亜莉沙の頭を撫でる。彼女は初めて貴璃子と会った日に
「駿の彼女だったら、私がコーディネイトしてあげる!」
の命令で貴璃子の馴染みのショップで勧められ
「嘘!」
っていう位安く買わせてもらったポロカラーの膝丈ストレートラインのワンピースを着ていた。それまでの彼女のイメージとはまるで違う服。なのに不思議と良く似合っていて、彼にとっては幼馴染でよく知ってる彼女のはずなのにまったく違う人を見ている気がしてならず、本当はとても戸惑っていた。そんな彼女の首筋に
「アレ?」
何だか気になるものを見つけた。
「亜莉沙、目立ってるよ。」
なんて。それはもちろんキスマーク。でも彼女はそれが何なのかよく分らず首を傾げた。その所為で髪が流れ耳元が露になる。
「ホラここ。」
彼が亜莉沙の三つ編みをやめた首筋をとんとんと指で触れ
「あっ!」
遅れて気づいた彼女が真っ赤になってさっと掌で隠した。
「ほら、こっち来いよ。」
仕方が無いって表情で彼は亜莉沙を電信柱の影へと寄せた。
「お前、絆創膏持ってない?」
「あるはず。」
あまりの恥ずかしさに顔を上げる事も出来ず彼女はごそごそとバックの中を探す。
「有った。」
その一枚を
「貸せよ。」
彼が取り上げ
「ったく面倒癖ぇ。」
ぶつぶつと言いながら彼女の首筋にひんやりとした絆創膏を当てた。
「なぁ、亜莉沙。」
「ん?」
「おまえ、幸せ?」
さりげなく、彼はそれを口にした。彼女はうつむいたまま
「うん。」
とだけ答えた。
「あのさ、俺たち腐れ縁じゃん?だからさ、もし何か困った事が有ったら俺に相談しろよ。」
貼り終わった絆創膏の上を撫でながら彼は呟いていた。
「うん、ありがとね。」
そう頷く亜莉沙を後に彼はバイト先に向かった。
「あ〜あ、あいつも大人になったのね。」
いっちぃは誰に聞かせるでも無くそう言っていた。彼にとって亜莉沙は頭はいいけどどこか鈍臭い妹みたいな存在だった。そのはずが。
「訳分かんなぇ。」
それは自分でも自分の感情を持て余している男のセリフで。
「参るよな。」
彼は顔をしかめた。
 つい先週の事。ドラックストアの片隅で駿を見かけた。彼に声をかけようと近づき
「あっ。」
彼のいる場所に思い至り思わず別の棚の後ろに隠れてしまっていた。これが以前だったら
「よう、俺が選んでやろうか?」
なんて平気で声をかけたはずが今回はそうもいかず。しばらく迷った後、一人で笑いを抑えながら立ち去る駿の後ろ姿をそっと見送った。彼が手にしていたのはピンクのかなり目立つ箱。駿がいなくなったその場所は彼にしてもお馴染みの売り場で
「なんだよ、やる事やってんじゃん。」
それは避妊ゼリー付きのコンドームのダースボックス。日頃彼らが使っているグレードより少しお高いタイプ。
「ちぇっ。」
彼は何を買いに来たのかもうどうでも良い気分になってしまい、ぶらぶらと店の外へ出た。ありがちな話しだが
「よぉ。」
その出入り口には駿がいて。
「誰と話してんの?」
いっちぃはわざとらしいし仕草で携帯片手の駿に顎をしゃくった。駿はさりげなくレジ袋を隠しながらウインクし
「じゃぁ亜莉沙、30分後。俺んちの近くのコンビニで。待ってるから遅れんなよ。」
と携帯を切った。
「よう、いっちぃ。お前も買い物?」
「まぁな。」
二人は肩を並べて歩き出す。
「所でリーダー。例のプロデューサーだけど、なんか言って来た?」
いっちぃは二人にとって一番無難なバンドの話題を振った。
「あっアレね。」
駿は鼻をしかめて
「メロディーラインは良いんだけど俺の詩には何かが足りないんだってよ。凄く単純すぎて面白味が無いらしい。」
肩をすくめながらぼやいた。
「もう少し“苦悩”の匂いが必要らしいや。」
「そんな事言ったってなぁ。」
「だろう?」
二人は微妙に笑いあった。
「“苦悩”がそこらへん、道ばたに落ちてたら困るよな。」
「だろう?」
あはあはと笑いながら交差点で別の道に分かれた。
 その次の週の事。亜莉沙は見ず知らずの男性からいきなり呼び止められていた。
「ちょっと。」
と。一見普通の人に見えた彼は
「高梨ってヤツが以前亜莉沙さんから本を借りていて、代わりに返して欲しいって頼まれたんだけど。」
それは何となく記憶に有った事だったから。
「そうなんだ。」
その本を受け取り
「ありがとう。」
疑う事もなく礼を言った。念のために本当に自分の本か確かめたかったからその場に立ち止まりページをぱらぱらとめくってみと
「あっ。」
そのとたん中からすり抜ける様に落ちた封筒が有った。
「これって。」
宛先は中村様。という事は亜莉沙に宛てたものじゃない。いけないと知りつつも中を開けると入っていたのは数枚の写真と丁寧な字で書かれた手紙。
「ラブレターじゃない。」
今時古風な事にそれは手書きのラブレターだった。
“6月20日午後5時に経済棟2号館3Bで待っています。”
細い女性の文字。写真に写っている人に覚えは無くて。
「どうしよう。」
彼女は迷った。何しろ6月20日と言えば今日だし、午後5時と言えばあと10分後だ。どういう経緯でこの本に挟まれたのか知らないけど、渡し損ねたラブレターの様に思え、彼女が持っているには気まずいものだった。それにもしこの手紙が先方の男性に渡っていると女性が信じているものだったら。そう考えると何だかいたたまれなくなり、彼女は日頃向かわない経済学部へと足を向けた。
 亜莉沙は文学部、そしていっちぃは経済学部で。
「もしもし、いっちぃ?」
彼女は時間が少ない事を考えとりあえず彼にその教室の場所を聞く事にした。何しろ古い大学で建物は建て増し。学部によって造りが微妙に違うという代物。それでもなかなか電話はつながらず。
「悪いんだけど。」
彼女は留守電に向かってしゃべった。
「経済棟の場所を教えて欲しいんだけど。2号棟3Bって自転車置き場の裏側で良かったかな?かなり急いでいるんだけど教えてもらえると助かるんでよろしく。」
それから大体の当たりを付けここだと思った階段を駆け上った。
 丁度その頃。
「あれっ?」
友人との話しに夢中で電話にで損ねたいっちぃが留守電を聞いた。彼がいたのは経済棟1号棟。最近2号棟は配管のトラブルかなにかで3階は使われていなかったと言う記憶が有り。
「おかしいなぁ。」
彼は首をひねりながら少し考えた後、
「悪い、ちょっと用事が出来た。」
そう言ってその場を後にした。
 遠くでサイレンの音がした気がした。
「何か有った?」
駿は実験器具からふと頭を上げた。ここは大学の中だから救急車は中には入って来れないシステムで
「どうしたんだろう。」
しばらくした後に窓の下を走っていく救急隊の制服に胸騒ぎを覚えた。ざわめく構内、経済棟へと向かう人影
「気にしても仕方が無いか。」
彼はそう自分をなだめ机に向かう。それでもなぜか再び救急隊、この場合患者を運んでいく雰囲気なのだがそれを感じ取り、思わず外を見てしまっていた。
「亜莉沙?」
その担架の脇にいるのは間違いなく恋人の亜莉沙で、上から見下ろす担架の上の男は
「いっちぃ?」
彼の頭からは血が垂れてて、乾いた路面に赤い印を残していった。


  
   もどる   クリスマス 目次   小説 インデックス  つづく



  * あとがき *

今日はめちゃくちゃ忙しくってキツかったです。
明日は子供達のパーティーで10人分のお昼ご飯やら何やらを
準備しなければならずてんやわんや。
一番大切だったのは、
「掃除しないと!!」
なのでした。

という事でたった今書き上がりました。
もう完全成り行き!!
これで明日で終わるはず無いですよね〜〜
あははは。

今日書く予定だった事がすっ飛んでしまい、
タイトルが中途半端な内容になってしもた〜
お許しを。

また明日頑張ります ♪


      ネット小説ランキング(月1回)  newvel




                        


            にほんブログ村 小説ブログ 恋愛小説(純愛)へ
[PR]

by hirose_na | 2008-12-23 22:57 | 恋愛小説