恋愛小説 クリスマスの悪夢 8 R15

8      男の純情?

 “吊るし上げ”
という言葉がある。今の彼らがら正にそれっだった。



「駿君。」
あと1時間でステージ本番。ケンタウロス達が揃って音合わせをしている所に荒川さんがやって来て
「聞いちゃったよ。」
いやにニコニコしながら全員に聞こえる様に話しかけて来た。
「亜莉沙ちゃん。」
この言葉で彼女はびくっと跳ねた。ここまで来てバレないと思えるはずはないものの、まさか今のタイミングとは。逃げ出したいけれどそうも出来ず。
「亜莉沙ちゃんさぁ、午前中のトークショーのヘルプで登場していたんだって?」
「ふ〜ん。」
ドラムを担当している駈がドラムスティックでポンポンと自分の肩を叩いた。
「何それ。」
「いや、凄かったらしいよ。」
荒川さんは逃げ出したい表情の亜莉沙を尻目に話しを続けた。
「ゲストが亜莉沙ちゃんを指名してステージに上がってもらって場内を盛り上げたらしいんだ、よね?」
「へ〜凄いじゃん。」
駈が相づちを打つ。
「前から予定してたの?」
と。
「あっ、まぁね。頼まれてたから。」
服も髪型も以前に戻し、プレストパウダーで肌色を誤摩化した彼女が答える。さすがにあの格好は慣れない身の上としたは恥ずかしかったから。
「なんだよ、水臭い。」
ジャーンという音をかき鳴らしいっちぃが笑った。
「本当だよ。それならそうと言ってくれれば良かったのに。」
今更の様に駈が肩をすくめた。彼は悪い人間では無いのだ。
「みんなで応援に行ったのに。」
その応援が嫌だったから彼女は言わなかっただけだった。でも、ふと考えた。もしあの時ケンタウロスのみんなを呼んでいたらあんなごたごたを起こす事無く、きっといっちぃを先頭にケンタウロス全員がステージに上がって来て話題をさらってフォローしてくれた、そんな気もした。彼らは優しいから。それでも起こった事には変わりなく。
「それが恥ずかしかったから言わなかったのに。」
とだけは告げた。荒川さんの表情からあの一件の事がばてていると言う確信は有ったけれど。
「こっそり出演の予定だったのになぁ。」
「でもさ、全然こっそりじゃなかったみたいじゃない?」
ふたりとも
“来るなぁ”
って予想していた話題が振られた。
「有坂のヤツが。」
このような活動をしていて目立つ事命の彼の事を知らないはずが無く
「また馬鹿やらかしたんだって?でもって亜莉沙に彼氏がいないからステージ公募を始めて?」
ケンタウロスのメンバーは目を丸くして話しを聞いていた。
「キスするだとかの騒ぎになって?」
「したの?」
いっちぃが騒いだ。
「したらしいんだよね〜、でもその前に。亜莉沙の本物の彼氏が有坂の司会に腹立てて?」
「あっ、ううん。」
「ううん?それって否定?」
荒川はちょっと意地悪をしていた。どのタイミングで助け舟が出るのか興味津々だったから。
「肯定だよね?でもって、その彼氏が会場中に響く声で
『亜莉沙は俺の女だから手を出すな!』
って叫んだ?」
かなり恥ずかしかった。亜莉沙は真っ赤になりながらうつむき、駿は頭を掻く。
「それからその彼氏がステージ上に駆け上がって来て、有坂の事をぼこぼこにして?」
それは違う、二人は
『こまったな。』
の顔。もしかして話しが大きくなり過ぎているのではないか、そんな不安がよぎる。一方荒川はそんなロマンテックな話しに
『騎士道精神だ。』
と勝手に納得し話しを続けた。
「『俺の亜莉沙に手を出すな!』
とか叫んで、一目もはばからないディープキスして?」
ここまで来ると
『羞恥プレイですか?』
なんて思えるほどこっ恥ずかしい。しかもそれだけじゃ収まらず。
「いきなりお姫様抱っこして
『お前らどきやがれ!』
って道作らせて、モーゼの十戒状態で退場したんだって?」
つまり人波を二つに分けその中央の花道を歩いたと。いや、それは無い。二人は同時に
「「有り得ない。」」
思わず声が重なり、
「あ〜」
である。
「誰その男、物好きっていうか、度胸があると言うか。」
けっけと笑ういっちぃに
「悪かったな。」
ここに来てやっと駿が動いた。
「俺だから。」
行き場を無くし固まっている亜莉沙の傍に行き、これ見よがしに彼女の肩を引き寄せ腕の中に取り込んだ。ここまでバレてしまって誤摩化す方がどうかしている。だから
「こいつの男、俺。」
含みを持って言い放つ。こうなったら開き直りの
『うだうだ言うなら俺を相手にしろ。』
である。亜莉沙はそんな彼のシャツの端を思わずぎゅっと握りしめていた。その細い指先にメンバー全員が
「おおっ!」
と仰け反った。下手ないちゃこきシーンより
“純愛”
って感じの二人の仕草にびびったのだ。
「有り得んだろう・・・・。」
そんな彼らに
「悪かったな。」
駿はぶっきらぼうに言うと彼女の三つ編みの先をそっと引っ張り、いつもの仕草で優しく解きほぐした。
「亜莉沙、俺の彼女だから。こいつにちょっかい出したら俺が許さないし。」
彼の語尾のキツさに亜莉沙は
「駿、言い過ぎ。」
小さく囁いて。
「ああっ。」
彼の目元がそっと緩んだ。
「悪い、言い過ぎた。」
と。
「でもまぁ、これからよろしく。これから側にいるのは雑用係の亜莉沙じゃなくて、俺の彼女の亜莉沙だから。優しくしてやってくれよな。」
ここまで来て彼は急に照れを感じにやっと笑いを浮かべた。
「あ〜でも言っとくけど、俺たちまだ
“清い関係”
だからな。」
そんな男同士の会話に
「いらない事言わないでよ!」
亜莉沙は思わず彼の口を手で覆っていた。自然に二人が向き合う形になり
「いいじゃん。」
焦る彼女に
『やっぱ亜莉沙、可愛いわ。』
なんて事を思いながら、秘密が減った事を純粋に喜ぶ駿だった。この後は二人を囲んでの怒濤(どとう)の質問攻めで。
「いつから〜?」
「春から。」
「春っていつよ〜?」
「3月24日。」
日付まで覚えている駿をみんなが笑った。
「どっちから〜」
つまり告白は
「そりゃ。」
と言いながら彼はちらっと亜莉沙を見て
「俺だろう。」
赤くなり。メンバーは顔を見合わせ合った。あの駿が自分から告るなんて信じられなくて
「どっきり??」
奇妙な顔で駈が首を傾げた。
「でもって、きっかけは?亜莉沙ちゃんのどこを愛しちゃった訳?」
「もしかして新曲のネタは彼女?」
「今までバレずに何やってたの?」
「いや、何もしなかったからバレなかったんじゃない?」
その盛り上がりはリハーサルの間中ずっと続き、二人の関係はケンタウロスの中では祝福されたものだと証明された様だった。
 そう言えば。いっちぃは目の前の高校生の様にベタ甘なカップルを見つめながら思い出した事が合った。確か3週間前の飲み会での事。
「女の子の好きなえっちってどんなのかお前ら知ってる?」
一人暮らしの駈の部屋で駿が微妙に呟いた。
「はぁ?」
全員が首を傾げた。もちろんこのメンバーに童貞はいないし、そこそこ遊んでもいて。今更そんな事を考え出す事なんか無かったから。
「そりゃ、気持ち良いえっちでしょ?」
けらけらと笑う験治と
「なに、哲学?」
からかう駈。
「“好きだ”とか“可愛い”とかおだてまくられてするえっち。ソレするとノって来てくれるもんな。」
一騎はそう答え頷く野郎ども。
「お前らな〜。」
頭を抱える駿。
「だってお前が昔そう言ったんじゃん?」
突っ込みを入れられ
「今の俺様、真剣なんですけど〜。」
彼はしかめっ面を作った。その様子を思い出し、一騎は複雑な気持ちになっていた。
「そう言う事だったのかよ。」
と。


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by hirose_na | 2008-12-21 17:11 | 恋愛小説