恋愛小説 ジンクス“7年目” 12 

12   エマージェンシー

 救急車の音は昔っから大嫌いだ。でもサイレンの鳴ってない救急車ってのがこれほど不気味だとは思わなかった。



「あれなぁ・・・・・」
「やっぱ電車に巻き込まれるのはやだよなぁ。」
って呟きながらかちゃかちゃと人を運ぶ台を押す救急の制服着た人の脇を通り、眠むそうにしている案内のおじちゃんに
「どこよ!!救急は」
って怒鳴って場所を教えてもらう。
 暗い廊下を突っ走った。まだそんなに飲んじゃい無かったはずなのに、足下がふらついて目が回りそう。何となく血の臭いを嗅ぎながら
「佐々木、佐々木隆敏ここにいるって聞いたけど。」
救急受付で叫んでた。
「ちょっとお待ちください。」
って言われ
『遅ぇっ!』
って思う。挙げ句に頭をひねられて
「そんな人、いませんよ。」
なんて言われた暁には
「嘘でしょう、ちゃんと調べてよ!」
完全にぶちぎれそうだった。
『覚悟しとけ。』
ってまでいわれてんだよ。それなのにいないってどういう事よ。深呼吸して落ち着かなきゃって思ったさ。病院間違えたのかなって。それじゃぁ彼、どこにいるのよって。でもその時、
「奈保子?」
聞き慣れたその声を空耳かと思った。もしや、今あたしの後ろにいるのは生き霊ですかって。
「奈保子。だよね。」
だから恐る恐る後ろを振り返る。
「どうしてここにいるんだよ?」
って紙コップ持ってる佐々木君に
「足ついてる!」
気がついたら彼に抱きついていた。
「生きてるよ!」
って
「まだ死んでない!生きてる〜!」
コップの中身が廊下に散らばっても、看護師さんに
「静かにしてくださいっ!」
って叱られても、あたしは泣くのを止められず、
「わんわん!」
言いながら彼の持ってたコートに包まれながら廊下の端っこに有った待ち合いのベンチで彼に抱きしめられていた。あたしは鼻をすすりっぱなし。絶対トナカイみたいな顔してるって思う。それでもあたしが落ち着くのにはかなりの時間が必要だった。温かい佐々木君の胸の中で子供みたいに
“いい子いい子”
してもらって、
「よしよし。」
って体揺すられて。こんな事が無いと一生出来ない事したって感じ。でも、ようやっと我に返ってみて感じたのは
“怖い”
って事だった。私は一体何やってんだろうなって。こんな事やってると、またもとのさやに戻れるのかなって、彼は私を許してくれるのかなって思ってくれちゃうじゃない。そんな事考え、黙り決め込んだ。それでも何かしゃべんなきゃって
「佐々木君は、」
そう話しかけ、あっ、また結局
“佐々木君”
って呼んでるよってため息が出た。でも仕方ないよね。だって私たち、もう別れた関係だし。だから話しをそのまま続けた。
「何が有ったの?」
って。
「佐々木君が事故に巻き込まれて大変だって話し聞いたよ。」
私の目に映る彼は少しくたびれてはいるもの、全然どこにも怪我している様には見えない。
「上司の人が私に“覚悟して欲しいって”電話くれた。」
その言葉の恐怖を彼に伝えた。
「きっと石橋さん、慌ててて間違えたんだよ。」
彼はふうっとため息をついて、それから少し笑った。
「あの人いつもそうだから。」
って。
「事故にあったのは僕と一緒にいた同僚の方。電車のドアに挟まれ引きづられてさ。」
彼の表情が大変だったって物語っていた。でもそれよりも私は彼が無事だって事に感謝していた。だから不謹慎だって分かって
「佐々木君じゃなくて本当に良かったよ。」
そう言っていた。彼は
「うん。」
って静かに頷いてくれた。そこではっと気がついた。
「でもそれって、困るんじゃない?あたしなんか呼び出しても意味ないし。」
この状況が飲み込め、これってヤバくないって思った。私を呼ぶより、事故に有った人の家族呼ばないといけないから。でもそんな私の顔色をみて
「大丈夫、それは。僕からご家族の方に連絡したから。もうすぐここに着く予定だし。それよりも。」
佐々木君はあたしの手を取るとギュッて握りしめ
「僕の事、心配してくれてありがとう。」
そう言った。
「当たり前じゃない。」
そうだよ、当たり前だよ。だって元カレなんだから。でもってふと湧き上がった疑問が口をついて出ていた。
「何で私の携帯、佐々木君の上司の人が知ってんの?」
彼はさっと目をそらした。

   
  

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人って焦り過ぎるとコメディはいりますよね、はい。
アンジェラ・奈保子も空回ってました。
いろんな意味で。

所でコメントで応援してくださったK様。
ありがとうございました。
凄く嬉しかったです ♪



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       アンジェラ頑張れって方ぜひ ♬
       あっでも彼女、言われなくても頑張るタイプだな。
                 



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by hirose_na | 2008-12-21 15:27 | 恋愛小説